妊娠・出産

妊娠したら考えるべきお金のこと~知っておきたい、出ていくお金・もらえるお金・準備するべき保険~

妊娠/出産は、新しい家族が増える大きなイベントです。そのため、出産費用や検査費用など様々な出費が発生します。
今回の記事では、妊娠/出産で必要なお金について詳しく解説します。妊娠/出産に際してのお金の不安や悩みを解消できるよう、妊娠から出産までに必要なお金、もらえるお金、準備しておくべき保険などをお話しします。

妊娠後にかかる費用一覧

妊娠後に必要となる費用を解説します。

妊婦健診費用

妊娠の段階別に、妊婦健診にかかる費用の一例を紹介します。
妊婦健診とは、妊婦が受診する健康診断のことで、基本的に自費診療です。妊婦健診の費用はトータルで約12万円ですが、自治体の助成金を利用すれば1/2〜1/3程度に抑えられます。自治体の助成制度は自治体によって異なりますので、詳しくは各自治体にお尋ねください。

※下記の金額は目安となります。

健診項目 費用
(病院によって異なります)
自治体助成金使用時
(例:東京都)
5〜6週 妊娠反応検査/超音波検査 5,800円 適用外
7〜8週 超音波検査 3,800円 適用外
9〜10週 妊婦健康診査/妊婦健診超音波/妊娠初期血液検査一式 30,900円 20,050円
13〜15週 妊婦健康診査/超音波スクリーニング/細胞診検査 16,800円 8,330円
16〜18週 妊婦健康診査/妊婦健診超音波 5,600円 530円
19〜23週 妊婦健康診査/子宮頸管長チェック/超音波スクリーニング検査(2回目) 10,300円 5,230円
24〜25週 妊婦健康診査/妊婦健診超音波 5,600円 530円
26〜28週 妊婦健康診査/妊婦健診超音波/貧血検査/HTLV-1(ATLA)/生化学スクリーニング(血糖検査を含む) 13,900円 8,830円
29〜30週 妊婦健康診査/超音波スクリーニング検査(3回目) 10,300円 0円
31〜32週 妊婦健康診査/妊婦健診超音波 5,600円 530円
33〜34週 妊婦健康診査/妊婦健診超音波 5,600円 530円
合計 114,200円 44,560円

分娩/入院にかかる費用

(公社)国民健康保険中央会の資料に基づき、分娩や入院にかかる費用を解説します。
妊婦が負担する費用の平均値は505,759円です(病院、診療所、助産所の合計)。しかし、健康保険組合や協会けんぽから出産育児一時金(420,000円)の給付があるため、実際の自己負担額は85,000円ほどです。
以下に、費用の内訳をまとめます。

※下記は目安となります。

項目 平均値
入院料 112,726円
室料差額 16,580円
分娩料 254,180円
新生児管理保育料 50,621円
検査・薬剤料 13,124円
処置・手当料 14,563円
産科医療補償制度 15,881円
その他 28,085円
合計 505,760円

ただし、上記金額は正常分娩にかかった費用であるため、帝王切開や吸引分娩などの異常分娩、無痛分娩の場合は、別途費用が加算されます。

その他、出産前後にかかる費用

病院へ支払う費用のほか、マタニティ用品やベビー用品等で100,000〜200,000円ほどの金額が必要です。
体型が変わる妊娠中は、マタニティ用の服や下着を用意しなければいけません。また、赤ちゃんを迎えるためのベビー用品(ベビーベッド、ベビーカー、チャイルドシートなど)も欠かせません。アイテムによっては使用期間が短いものもあるため、レンタルやフリマアプリを利用したり、身近な人から譲ってもらったりして、なるべく費用を抑えられるようにしましょう。

出産前 出産後
マタニティウェア 入院用品
マタニティ用下着 ベビーウェア
通院のための交通費 授乳用品
家電/家具の買い替え 衛生用品
おもちゃ
おでかけグッズ

妊娠/出産時にもらえる費用一覧

妊娠/出産時にもらえるお金や助成金について、自営業・会社員・専業主婦に分けて説明します。
自営業や会社員と専業主婦では、受給できる手当が異なります。自分がもらえる手当を正確に把握して、手続き漏れのないようにしましょう。

自営業(国民健康保険) 会社員など
((健康保険組合・協会けんぽ)
専業主婦
(健康保険の被扶養者)
妊婦健診費の助成 受けられる(自治体によって金額が異なる)
出産育児一時金 受けられる
(被扶養者の場合は家族出産一時金。金額は出産育児一時金と同額)
高額療養費 受けられる
出産手当金 受けられない 受けられる 受けられない
児童手当 受けられる
育児休業給付 受けられない 受けられる 受けられない

妊婦健診費の助成

妊婦健診費の助成を受けるためには、自治体への申請が必須です。
助成額は、各自治体によって異なります。平成30年の厚生労働省の「妊婦健康診査の公費負担の状況に係る調査」によると、全国の市区町村の助成額は約71,000円〜約137,000円と幅があり、全国平均額は105,734円です。
妊娠が判明したら、住んでいる市区町村の窓口へ、できるだけ早く妊娠の届出を行いましょう。届出を行うと、母子手帳と一緒に健診費の助成を受けるための補助券が渡されます。健診時には、補助券を持参し、病院の窓口で補助券を使用する旨を伝えましょう。

出産育児一時金

出産後、自営業や会社勤めの人には「出産育児一時金」、健康保険の被扶養者となっている専業主婦は「家族出産育児一時金」が受け取れます。
いずれも金額は420,000円(一児あたり)です。もし、出産費用が420,000円未満であれば、差額を精算し、本人へ支給されます。
出産育児一時金の受け取り方は3種類(直接支払制度・受取代理制度・産後申請方式)あります。
直接支払制度:出産育児一時金の支給申請および受取を、病院が行います。本人は合意文書を記入するのみです。
受取代理制度:出産育児一時金の受取代理人を病院とする旨を、健康保険組合(協会けんぽの人は協会に)に事前申請します。一時金の受取先は病院です。一部の小規模医療機関でのみ利用されている制度です。
産後申請方式:出産費用の支払いの後、本人が健康保険組合(協会けんぽの人は協会に)へ一時金の申請を行います。一時金は本人に支給されます。

直接支払制度、受取代理制度は、病院が直接一時金を受け取るため、窓口での費用負担を抑えることができます。産後申請方式は一旦窓口で費用をすべて支払った後に、本人が一時金の申請を行うため、一時的に出産費用を立て替えなければいけません。
また、健康保険組合によっては独自の付加給付金制度があります。健康保険組合独自の付加給付金は、健保組合へ申請し、本人に支給されます。自分が加入している健康保険組合の制度をよく理解し、忘れずに申請しましょう。

高額療養費

高額療養費は、医療費の支払いを自己負担限度額まで抑えることができる制度です。異常分娩は治療とみなされるため、高額療養費が適用されます。
高額療養費の申請を行うと、実際に支払った医療費と自己負担額の差額が払い戻されます。払い戻しの金額は標準報酬月額(※)によって異なります。

年収 1か月の自己負担限度額
住民税非課税 3万5,400円
年収約370万円以下 5万7,600円
年収約370万円~770万円 8万100円+(医療費-26万7,000円)×1%
年収約770万円~1160万円 16万7,400円+(医療費-55万8,000円)×1%
年収約1160万円以上 25万2,600円+(医療費-84万2,000円)×1%

※標準報酬月額:社会保険料の算定基礎となる金額のこと。基本給やその他手当などの合計額を元に設定します。

高額療養費の対象は1日から末日までの1ヵ月間の医療費であるため、月をまたぐ場合は毎月申請が必要です。また、申請から支給まで数ヶ月かかる場合があります。
また、70歳以上の場合は計算方法が違います。詳しくは以下のリンクを参考にしてください。

参考:厚生労働省|高額療養費制度を利用される皆さまへ

出産手当金

出産手当金は、会社員などで健康保険(健康保険組合・協会けんぽ)に加入しているの人が出産のために仕事を休んだ時に支給される手当です。
支給金額は、標準報酬月額によって異なります。直近12ヵ月間の(標準報酬月額の平均額÷30×2/3相当額)が休業1日分の額として支払われます。支給される期間は産前42日(出産日含む)と産後56日で、出産予定日よりも遅い出産の場合、遅れた日数分は産前に加算されます。

児童手当

中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の児童を養育している場合、児童手当が支給されます。
児童手当は申請することによって支給されるものです。申請漏れのないよう、ご注意ください。支給額は児童の年齢によって異なります。

※下記は目安となります。

児童の年齢 児童手当の額(一人あたり月額)
3歳未満 一律15,000円
3歳以上小学校修了前 10,000円(第3子以降は15,000円)
中学生 一律10,000円

※児童を養育している方の所得が所得制限限度額以上の場合は、月額一律5,000円の特例給付となります。

支給時期は年3回で、毎年6月、10月、2月に、それぞれの前月分までの手当が支給されます。
子供が生まれたら、まず、現住所の市区町村に「認定請求書」を提出します。市区町村の認定を受ければ、申請月の翌月分の手当から支給されます。申請が遅れると、遅れた月分の手当を受けられなくなります。里帰り出産の時など、特にご注意ください。
ただし、出産日が月末に近く、出産月中に申請できない場合、翌月に申請しても大丈夫です。出産日の翌日から15日以内の申請であれば、申請月分から支給されます。

育児休業給付

育児休業給付とは、会社員(雇用保険の被保険者)の育児休業期間中に支給される手当です。
育児休業給付の支給額は、(休業開始時の賃金日額×支給日数の67%(育児休業の開始から6か月経過後は50%)相当額)です。
支給期間は以下の表のとおりです。

支給期間
原則 産後休業明けの日から子供が1歳になる誕生日の前々日まで
子供が1歳到達時点で、保育園に入所できない場合 最大1歳6ヶ月になる日の前々日まで延長可能
子供が1歳6ヶ月になる日の前々日時点で、保育園に入所できない場合 2歳の誕生日の前々日まで延長可能

妊娠したら保険に加入できない!?

保険に加入できないケースをいくつかあげます。
妊娠27週目を超えている
過去5年以内に異常出産をしている

※保険商品によっては「特定部位不担保」等の条件のもと加入できるケースもあります。

民間の保険加入を希望する場合は、妊娠する前に加入しておくことをおすすめします。妊娠が判明してからの保険加入の場合、条件付きの保障となる可能性があるためです。通常、妊娠27週目までであれば、ほとんどの医療保険に加入できます。しかし、「特定部位不担保」という条件がつく可能性があります。
特定部位不担保は、特定部位の疾病や手術が保障対象外となること。例えば、加入直後の出産が異常出産であっても、保障対象外となり、給付金を受け取れない可能性があります。
重症のつわりや切迫早産、切迫流産、帝王切開など妊娠にはリスクがつきものです。妊娠しても加入できる保険については、詳細を別記事でご紹介しておりますので、参考にしてみてください。

この記事を書いた人

河渕ちさと
社会保険労務士 / 河渕ちさと社会保険労務士事務所

流通業、企業向けの研修・コンサルティング業にて勤務後、社会保険労務士として開業。 「様々な人がよりハッピーに、より長く働けるための環境づくり」を目指し、企業の就業規則の作成・見直しや年金等の相談業務等に携わっている。