老後

介護保険法とは?基本情報と改正のポイント

たびたび見直し・改正が行われている「介護保険法」。
生活のなかで耳にすることはあっても、どのような内容なのか、どこが改正されたのかまでは、なかなかわかりにくいものです。
この記事では、介護保険法の基本情報や改正のポイントについて解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

介護保険法とは?

介護保険法とは?
日本の国民は40歳以上になると、すべての人が「介護保険」の被保険者となります。
介護保険の被保険者のうち要介護・要支援の認定を受けた人は、「介護給付」「予防給付」と呼ばれる介護サービスを受けることが可能です。

介護保険法とは、この介護保険制度を運用していくために定められた法律のことです。

介護保険法は1997年に公布され2000年から施行されていますが、時代に合わせた内容に見直すため、原則3年を1期として定期的に見直し・改正が行われています。

そのため介護保険の被保険者の方やそのご家族は、どのような法改正がされたのか確認し、最新の介護保険法を把握しておく必要があります。

介護保険法のこれまでの改正とポイント

介護保険法のこれまでの改正とポイント
これまでの法改正で、介護保険法はどのような経緯をたどってきたのでしょうか。
厚生労働省の開示資料より、改正のポイントを表にまとめました。

■介護保険法のこれまでの改正とポイント

改正のタイミング 改正のポイント
第1期
(1997年公布・2000年施行)
2000年4月より介護保険法施行
第2期
(2005年改正・2006年施行)
明るく活力のある超高齢社会の構築・制度の持続可能性・社会保障の総合化を目指す

  • 新しく「予防給付」を創設
  • 居住費用・食費の見直し→保険給付の対象外に
  • 地域包括支援センターの創設
第3期
(2008年改正・2009年施行)
介護サービス事業者の不正を防止し、介護事業運営の適正化を目指す

  • 業務管理体制の整備を義務付け
  • 違反事業者の事務所への立入検査の実施
  • 不正行為の組織的関与の有無を確認し、自治体が指定・更新の可否を判断
第4期
(2011年改正・2012年施行)
高齢者が地域で自立した生活を営める「地域包括ケアシステム」の構築を目指す

  • 24時間対応の定期巡回・随時対応サービスや複合型サービスを創設
  • 介護福祉士・一定の教育を受けた介護職員などによる痰の吸引の実施を可能とする
  • 有料老人ホームなどにおける前払金の返還に関する利用者保護規定を追加
  • サービス付き高齢者向け住宅の供給促進
  • 認知症対策として、市町村における高齢者の権利擁護を推進
  • 地域密着型サービスの公募・選考による指定を可能とする
第5期
(2014年改正・2015年施行)
効率的かつ質の高い医療提供体制および地域包括ケアシステムの構築を目指す

  • 消費税増収分を活用し、新たな基金を都道府県に設置
  • 予防給付(訪問介護・通所介護)を地域支援事業に移行
  • 一定以上の所得の利用者の自己負担を2割へ引上げ
  • 特別養護老人ホームの新規入所者を、原則要介護3以上に重点化
第6期
(2017年改正・2018年施行)
高齢者の自立支援と要介護状態の重度化防止・地域共生社会の実現・制度の持続可能性の確保を目指す

  • 市町村が高齢者の自立支援・重度化防止に取り組むための仕組みを制度化
  • 都道府県による市町村に対する支援事業の創設
  • 日常的な医学管理・看取りおよびターミナル・生活施設の機能を備える新たな介護保険施設を創設
  • 自己負担2割の者のうち、特に所得の高い層の自己負担割合を3割に引き上げ
第7期
(2020年改正・2021年施行)
複雑化・複合化した支援ニーズに対応する包括的な福祉サービス提供体制の整備を目指す

  • 認知症施策の推進に向け、国・地方公共団体の努力義務を規定
  • 医療・介護のデータ基盤の整備の推進
  • 介護人材確保および業務効率化の取り組み強化
  • 社会福祉連携推進法人制度を創設する

参考:厚生労働省|介護保険制度の概要

これから先、介護保険の被保険者となる高齢者の人口はどんどん増えていく見込みです。
一方で、介護人材の確保は難しくなっていくでしょう。

どのようにして介護保険制度を維持し、地域で連携して行き届いたケアを供給するかという課題を解決するため、今後も時代に即した介護保険法の改正がなされていくはずです。

介護保険制度の仕組み

介護保険制度の仕組み
そもそも介護保険制度とはどのような仕組みなのか、概要を解説します。

介護保険制度の目的

介護保険制度は、高齢者の介護を社会全体で支え合うことを目的に作られました。
制度のポイントとして、単なる介護の提供にとどまるのではなく、高齢者の自立支援を促し、利用者が望むサービスを選択できる仕組みを重視しています。

介護保険制度の概要

以下の表は、介護保険制度の概要をまとめたものです。

第1号被保険者 第2号被保険者
対象者 65歳以上の人 40歳以上65歳未満の人
受給要件 要介護または要支援状態 特定疾病による要介護または要支援状態
保険料の徴収方法 市町村が徴収
(年金から天引き)
医療保険者が医療保険の保険料と一括徴収

出典:厚生労働省老健局|令和3年5月介護保険制度の概要

表のとおり介護保険の被保険者は、年齢によって「第1号被保険者」と「第2号被保険者」の2種類に分かれます。
それぞれ受給要件と保険料の徴収方法が異なる点を押さえておきましょう。

介護保険の自己負担割合

介護保険の受給要件に当てはまる方は、原則1割の自己負担で介護サービスを受けられますが、以下の条件に当てはまる方は原則2割または3割負担となります。

「合計所得金額160万円以上」かつ
「年金収入+その他合計所得金額280万円以上の単身者(夫婦世帯の場合346万円以上)」
2割負担
「合計所得金額220万円以上」かつ
「年金収入+その他合計所得金額340万円以上の単身者(夫婦世帯の場合463万円以上)」
3割負担

ただし、介護施設などでの食費や居住費は全額自己負担です。
また、サービス利用者の目標や要望に沿って作られる「ケアプラン」の作成費用については、自己負担はありません。

介護保険を利用できるのはどういうとき?

介護保険を利用できるのはどういうとき?
介護保険を利用できるのは、被保険者が「要支援」または「要介護」状態になったときです。
介護サービスの必要度に応じて要支援状態は2段階、要介護状態は5段階の区分に分けられており、この区分によって月々のサービス上限額が変わります。

■要支援・要介護区分

要支援3

状態 区分
要支援状態
日常生活に支障があり、要介護状態にならないよう
軽減・悪化防止のための支援が必要な状態
要支援1
要支援2
要介護状態
日常生活における基本動作の全部または一部に
介護が必要な状態
要支援1
要支援2
要支援3
要支援4
要支援5

ただし、40歳以上65歳未満の第2号被保険者については、末期がんや関節リウマチなどの特定疾病によって要介護または要支援状態になったときのみ、介護保険を利用可能です。

■16の特定疾病
介護保険を利用してサービスを受けるには要介護認定を受け、日常生活にどの程度の介護や支援が必要なのか、審査・判定してもらう必要があります。
要介護認定はお住まいの市町村の窓口から申請できるので、介護が必要になったらすみやかに手続きを進めましょう。

介護保険で利用できるサービス

介護保険で利用できるサービス
介護保険で利用できるサービスは、大きく分けて「介護給付」と「予防給付」の2つがあります。
具体的にどのようなサービスがあるのか、それぞれ詳しく見てみましょう。

要介護の場合に受けられる「介護給付」

要介護状態の人は、「介護給付」と呼ばれるサービスを受けられます。

■介護給付の例

指定・監督 サービスの例
都道府県・政令市・中核市 訪問介護/訪問看護/訪問リハビリテーション/通所介護(デイサービス)/通所リハビリテーション/短期入所生活介護(ショートステイ)/福祉用具貸与/特定福祉用具販売/介護老人福祉施設
市町村 夜間対応型訪問介護/認知症対応型共同生活介護(グループホーム)/居宅介護支援

これらのなかから日常生活を送るのに必要なサービスを選択し、介護保険施設もしくは自宅にて介護を行います。

要支援の場合に受けられる「予防給付」

要支援状態の人は、「予防給付」と呼ばれるサービスを受けられます。

■予防給付の例

指定・監督 サービスの例
都道府県・政令市・中核市 介護予防訪問看護/介護予防訪問リハビリテーション/介護予防通所リハビリテーション/介護予防短期入所生活介護(ショートステイ)/介護予防福祉用具貸与/特定介護予防福祉用具販売
市町村 介護予防認知症対応型共同生活介護(グループホーム)/介護予防支援

予防給付の目的は、被保険者が要介護状態になってしまうのを予防することです。
そのため運動・口腔・栄養改善事業など、自立した生活を送るために必要な支援サービスが中心となっています。

まとめ

介護保険法とは介護保険制度を運用していくための法律のことで、3年に1回の頻度で改正が行われています。

厚生労働省の展望では、2040年には高齢者人口の伸びは落ち着き、現役世代が急減するとされています。
そのような時代が到来しても、誰もが健康で明るく自立した生活を送れるよう、介護保険法は今後も見直され続けていくでしょう。

また豊かな老後を送るためには、健康だけでなくお金も必要です。
できるだけ早いうちから家計の見直しや貯蓄を始め、十分な老後資金を確保しておきましょう。

自分に必要な老後資金の金額を知りたい方やライフプランについて考えてみたい方は、LifeRのFP(ファイナンシャル・プランナー)無料相談サービスをぜひご利用ください。

この記事を書いた人

大渕ともみ
ファイナンシャルプランナー/フリーライター

福岡で活動するフリーライター。9年間の会社員生活を経て、仕事と育児の両立のため前職を2020年7月に退職し、同年8月にライターとして独立開業。

結婚をきっかけにマネー情報に興味をもち「教育費や老後資金を賢く準備したい」と独学で2級FP技能士の資格を取得。「お金はきちんと貯めてきちんと使う」がモットー。自身でも資産運用に取り組みながら、金融関連メディアを中心に執筆活動中。

好きな食べ物はお寿司のえんがわ。趣味はウィンドウショッピングと洋裁。活発な娘に翻弄される毎日。

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