老後

年金はいくらもらえる?年代・年収・職業別の平均受給額を解説

私たちは日ごろ、厚生年金や国民年金の保険料を何気なく納めていますが、老後の年金受給額まで把握している方は、あまりいないのではないでしょうか。
そこでこの記事では、年収別の厚生年金・国民年金の受給額シミュレーションを行います。
また、老後にもらえる年金を増やす方法も紹介するので、自分の年金受給額の目安を知りたい方、老後に備えて年金の知識を身に付けたい方は、最後まで読んでみてください。

年金の種類は「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の2つ

年金の種類は「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の2つ
私たちが老後に受け取る年金のことを「老齢年金」といい、その種類は「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の2つがあります。

老齢基礎年金

老齢基礎年金とは、受給資格期間(保険料納付済期間・免除期間・合算対象期間の合計)10年以上の人が65歳から受け取れる年金です。
老齢基礎年金の支給額は一律で決められており、20歳から60歳までの40年間、全期間分の国民年金保険料を納めていれば満額が支給されます。
2021年4月時点の満額支給額は月6万4,816円ですが、国民年金保険料の免除期間などがある場合はその分を差し引いた金額が支給されるため、もらえる金額は少なくなります。

老齢厚生年金

老齢厚生年金は、会社員・公務員といった厚生年金保険や共済年金の加入者(第2号被保険者)だけがもらえる年金です。
老齢厚生年金の支給額は、加入期間や加入期間中の平均収入、生年月日などの条件によって変わります。
国民年金の第2号被保険者は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方をもらえるため、老後に受け取れる年金額が第1号被保険者・第3号被保険者よりも多くなります。

被保険者の種類 対象者 もらえる年金の種類
第1号被保険者 自営業者・学生・無職の人など 老齢基礎年金
第2号被保険者 会社員・公務員など 老齢基礎年金
老齢厚生年金
第3号被保険者 第2号被保険者の被扶養配偶者 老齢基礎年金

【年収別】老後にもらえる厚生年金・国民年金の受給額シミュレーション

【年収別】老後にもらえる厚生年金・国民年金の受給額シミュレーション
老後にもらえる年金受給額は、具体的にどのくらいになるのでしょうか。
以下3つのケースにおいて、年収別にシミュレーションしてみましょう。

  1. 会社員の場合
  2. 夫:会社員/妻:専業主婦の場合
  3. 自営業の夫婦の場合
注意事項
・金額は概算であり、実際に支給される年金額を保証するものではありません。
・国民年金保険の加入期間480か月/厚生年金保険の加入期間456か月として計算しています。
・年収は加入期間中の平均年収とし、12か月で割った値をもとに標準報酬月額を判定しています。

1.会社員の場合

年収 老齢基礎年金(月額) 老齢厚生年金(月額) 合計(月額)
年収300万円 6万5,000円 5万円 11万5,000円
年収400万円 7万1,000円 13万6,000円
年収500万円 8万5,000万円 15万円
年収600万円 10万4,000円 16万9,000円
年収700万円 12万3,000円 18万8,000円
年収800万円 13万5,000円 20万円

厚生年金保険に加入する会社員は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を受け取れます。

例えば年収600万円の単身者の場合、老齢基礎年金として6万5,000円、老齢厚生年金として10万4,000円がもらえるので、概算の年金受給額は月16万9,000円です。

そのほか年収500万円の夫・年収300万円の妻の共働き世帯では、夫婦の年金受給額を合計した26万5,000円を受給できる計算となります。

2.夫:会社員/妻:専業主婦の場合

年収 老齢基礎年金(月額) 老齢厚生年金(月額) 合計(月額)
年収300万円 夫:6万5,000円
妻:6万5,000円
夫:5万円
妻:なし
18万円
年収400万円 夫:7万1,000円
妻:なし
20万1,000円
年収500万円 夫:8万5,000円
妻:なし
21万5,000円
年収600万円 夫:10万4,000円
妻:なし
23万4,000円
年収700万円 夫:12万3,000円
妻:なし
25万3,000円
年収800万円 夫:13万5,000円
妻:なし
26万5,000円

会社員の夫と専業主婦の妻の組み合わせの場合、夫は老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を、妻は老齢基礎年金のみを受給できます。

3.自営業の夫婦の場合

年収 老齢基礎年金(月額) 老齢厚生年金(月額) 合計(月額)
年収300万円 夫:6万5,000円
妻:6万5,000円
なし 13万円
年収400万円
年収500万円
年収600万円
年収700万円
年収800万円

夫婦ともに自営業者の場合、厚生年金保険の加入者がいないため、夫も妻も老齢基礎年金のみ受給可能です。
また、老齢基礎年金の支給額は年収に左右されないので、どの年収帯でも年金受給額は夫婦2人分で約13万円となります。

年収500万円・1500万円ではどのくらい年金受給額が違うのか?

年収500万円・1500万円ではどのくらい年金受給額が違うのか?
以下は、年収500万円・1500万円の年金受給額を表にしたものです。

年収500万円 年収1,500万円
会社員の場合 15万円/月 20万円/月
自営業者の場合 6万5,000円/月

※国民年金保険の加入期間480か月/厚生年金保険の加入期間456か月として計算
会社員の場合、加入期間中の平均年収によって老齢厚生年金の支給額が変わるため、年収500万円と年収1500万円ではトータルの年金受給額も変わってきます。

ただし上の表のとおり、その差はそれほど大きくありません。
なぜなら厚生年金の保険料や受給額の計算に使われる「標準報酬月額」という値には、上限が決められているからです。
年収762万円以上の場合、標準報酬月額は上限の65万円となり、保険料や受給額が高くなりすぎないような仕組みになっています。

一方で自営業者の場合は、年収に関係なく一律で老齢基礎年金のみが支給されるため、年収500万円でも年収1500万円でも年金受給額は同じです。

老後にもらえる年金の水準は今後下がっていく可能性もある

老後にもらえる年金の水準は今後下がっていく可能性もある
現在の年金の水準が、今後も保たれていくとは限りません。
少子高齢化によって保険料を納める20歳~60歳の人の割合が減り、逆に年金を受け取る65歳以上の人の割合が増えれば、年金の水準が下がってしまう可能性があります。

以下は、厚生年金保険の平均年金月額を年齢別に並べた表です。

■年齢別 厚生年金保険の平均年金月額

年齢 厚生年金保険の
平均年金月額
60~64歳 7万6,681円
65~69歳 14万2,972円
70~74歳 14万6,421円
75~79歳 15万1,963円
80~84歳 16万575円
85~89歳 16万3,489円

出典:令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況

60代前半と80代後半の厚生年金保険の平均年金月額には、2倍以上の差があります。
これは2000年の法律改正により、老齢厚生年金の支給開始年齢が60歳から65歳へと段階的に引き上げられたことが少なからず影響しています。
このような施策が行われたのは、保険料を納める世代が減っているのに年金の水準をそのままにしておけば、現役世代の保険料負担が大きくなってしまうためです。

老齢基礎年金はどうでしょうか。
厚生労働省の2019年の年財政検証資料によると、30年後には老齢基礎年金の水準は約27%下がる見通しとなっています。
この予測は日本経済の成長と労働参加の進展が前提となっているため、30年後の状況が想定を下回るようであれば、老齢基礎年金の水準はもっと下がるおそれもあります。

そのため私たちは、今の水準よりも年金受給額が減ってしまうことを想定しつつ、老後に備える必要があるのです。

老後の年金を多くもらうには? 被保険者の種類別に解説

老後の年金を多くもらうには? 被保険者の種類別に解説
老後の年金をできるだけ多くもらうには、どうすればいいのでしょうか。
被保険者の種類別に、考えられる方法を解説します。

1.第1号被保険者のみ利用できる方法

自営業者・学生・無職の人など、第1号被保険者が老後の年金を多くもらう方法は次の4つです。

1-1.国民年金基金に加入する
1-2.付加保険料を納付する
1-3.国民年金任意加入制度を利用する
1-4.保険料を追納する

ひとつずつ詳しく解説します。

1-1.国民年金基金に加入する

国民年金基金とは、厚生年金保険の加入者と国民年金保険の加入者の老後の年金額差を埋めるために作られた公的年金制度です。
第1号被保険者は国民年金基金に加入することで、将来もらえる年金額を増やせます。

国民年金基金

国民年金基金への加入は口数制となっており、7種類の給付型から好きなプランを自由に選べます。
掛金の上限は、iDeCoの掛金と合わせて6万8,000円です。
また国民年金基金の掛金は全額が所得控除されるため、所得税や住民税の節税効果も期待できます。

1-2.付加保険料を納付する

第1号被保険者は、任意で「付加保険料」を納付できます。

月額400円の付加保険料を納付すると「付加保険料の納付期間×200円」が老齢基礎年金に上乗せされるため、老後の年金受給期間が2年以上ならば必ず元を取れます。

ただし、国民年金基金に加入している場合は、付加保険料を納付できないため注意しましょう。

1-3.国民年金任意加入制度を利用する

国民年金の保険料は20歳から60歳までの480か月間納付することになっています。
もし学生納付特例を受けるなどして保険料を払い込みしていない期間があれば、老齢基礎年金を満額受給できません。

そこで検討したいのが「国民年金任意加入制度」です。
この制度を利用すれば60歳から65歳になるまでの5年間、保険料の納付月数が480か月に達するまで保険料を納められるので、老後にもらえる年金を増やせます。

ただし老齢基礎年金の繰り上げ受給をした場合、任意加入制度は利用できません。

1-4.保険料を追納する

国民年金保険料の免除・納付猶予・学生納付特例を受けた期間のある方は、保険料の追納が可能です。
保険料を追納すれば老齢基礎年金の受給額を増やせるうえ、社会保険料控除により納める所得税・住民税を少なくできるというメリットもあります。

追納が承認された月の前10年以内分しか追納できないため、希望する方は早めに申請手続きをしましょう。

2.第2号被保険者のみ利用できる方法

会社員や公務員など、第2号被保険者が老後の年金を多くもらうには、できるだけ長い期間にわたり厚生年金保険料を納める方法が有効です。

厚生年金保険加入者の上限年齢は70歳です。
60歳以降も定年後再雇用制度を利用して働き続ければ、保険料の納付期間が長くなるため、老後に受け取れる年金を増やせます。

3.被保険者の種類に関係なく利用できる方法

被保険者の種類に関係なく、老後の年金を増やす方法もあります。

3-1.iDeCoを利用する
3-2.繰り下げ受給する

それぞれ詳しく解説します。

3-1.iDeCoを利用する

iDeCo(イデコ)とは「個人型確定拠出年金」とも呼ばれる任意加入の私的年金制度です。

iDeCoでは毎月任意の掛金額(5,000円以上1,000円単位)を拠出し、自分で選んだ運用商品を購入して老後まで運用します。
拠出した掛金と運用益は、60歳以降に年金または一時金として受け取れるため、公的年金だけでは不安な方は検討してみましょう。

iDeCoは税制メリットも大きく、掛金が全額所得控除になるうえ、通常は運用益に課される約20%の税金も非課税となります。
ただしiDeCoは「運用」なので、定期預金など元本保証型の商品を選ぶ場合を除き、元本割れリスクがあることを理解しておきましょう。

3-2.繰り下げ受給する

老齢基礎年金・老齢厚生年金の受給開始は原則65歳からですが、受給開始のタイミングを66歳から70歳までの間に繰り下げることも可能です。
年金を繰り下げ受給する場合、「繰り下げた月数×0.7%」が加算されるため、年金受給額が増えるというメリットがあります。

例えば年金の受給開始年齢を70歳に繰り下げると、「60か月×0.7%=42%」が上乗せされるのです。

繰り下げ受給による年金受給額のシミュレーション

繰り下げ受給による年金受給額のシミュレーション
年金を繰り下げ受給すると年金受給額はどう変わるのか、受給開始年齢別にシミュレーションしてみましょう。

2022年4月時点の老齢基礎年金は、満額支給の場合で年間77万7,800円です。
原則どおり65歳から年金受給を開始すると、毎年78万900円を受け取れます。

これを基準に、受給開始年齢を1歳ずつ繰り下げた場合の累計年金受給額を計算し、表にしました。

受給条件 受給条件
受給開始年齢 受給率(%) 年間受給額 70歳時点 75歳時点 80歳時点 85歳時点 90歳時点 95歳時点
65歳 100 780,900円 4,685,400円 8,589,900円 12,494,400円 16,398,900円 20,303,400円 24,207,900円
66歳 108.4 846,496円 4,232,480円 8,464,960円 12,697,440円 16,929,920円 21,162,400円 25,394,880円
67歳 116.8 912,091円 3,648,364円 8,208,819円 12,769,274円 17,329,729円 21,890,184円 26,450,639円
68歳 125.2 977,687円 2,933,061円 7,821,496円 12,709,931円 17,598,366円 22,486,801円 27,375,236円
69歳 133.6 1,043,282円 2,086,564円 7,302,974円 12,519,384円 17,735,794円 22,952,204円 28,168,614円
70歳 142 1,108,878円 1,108,878円 6,653,268円 12,197,658円 17,742,048円 23,286,438円 28,830,828円

66歳・68歳・69歳で年金受給を始めると80歳時点で、70歳から年金受給を始めると85歳時点で累計年金受給額が逆転しています。

このように長生きすればするほど、年金の繰り下げ受給による恩恵は大きくなるのです。

「ねんきん定期便」の読み方を解説|年金について把握しておきましょう

「ねんきん定期便」の読み方を解説|年金について把握しておきましょう
毎年誕生月ごろに「ねんきん定期便」というハガキが届きますが、「読み方がよくわからない」という方もいるでしょう。
ねんきん定期便は「50歳未満用」と「50歳以上用」で内容が少し異なるので、それぞれ読み方を簡単に解説していきます。

50歳未満の場合

ねんきん定期便の表側には、これまでの加入実績に応じた年金額のグラフが記載されています。
これは、あくまでも現時点での加入実績に応じて計算された年金額なので、思ったより金額が低くても心配する必要はありません。
今後も保険料を納付し続けていくと、受給できる年金額は増えていきます。

グラフの隣には「最近の月別状況です」と記載された欄があり、国民年金の納付状況、厚生年金保険の加入区分・標準報酬月額・標準賞与額・保険料納付額を確認できます。

また、ハガキの裏側には、これまでの保険料納付額の累計や年金加入期間が記載されています。
実際とは異なる記載がされている場合は、お近くの年金事務所に問い合わせましょう。

ちなみに右下に記載されている「お客様のアクセスキー」は、インターネットから自分の年金情報をいつでも確認できる「ねんきんネット」の利用登録時に使うものです。
ねんきんネットは見込年金受給額の試算もできる便利なサービスなので、ぜひ活用してみてください。

50歳以上の場合

50歳以上用のねんきん定期便の表側にもグラフが記載されていますが、これは60歳まで現在の年金加入制度を継続した場合にもらえる、年金見込額を示しています。
そのため加入状況に変化がなければ、今後も記載金額が大きく変化することはないと考えましょう。

年金の見込額の隣には、70歳で繰り下げ受給した場合にもらえる年金額が記載されているので、ぜひ繰り下げ受給検討時の参考にしてください。

ハガキの裏側には「老齢年金の種類と見込額」の欄があります。
表側のグラフと同じく、60歳まで現在の年金加入制度を継続した場合の年金見込額が詳細に表示されているので、老後に受け取れる年金額をある程度把握することが可能です。

ねんきん定期便が届いたらしっかりと内容を確認し、老後への備えに活かせるよう心がけましょう。

まとめ

老後の年金受給額は、厚生年金と国民年金のどちらに加入しているかによって大きく異なります。
自営業者をはじめとする国民年金の加入者は、厚生年金加入者より年金受給額が少なくなってしまうため、付加保険料を納付するなど対策を考えるとよいでしょう。
また今後、少子高齢化の影響や日本経済の状況によっては、年金の水準が下がっていく可能性もあります。

そのため公的年金だけを頼りにするのではなく、貯蓄や資産運用で老後に備えることも大切です。
LifeRではお金のプロであるFP(ファイナンシャル・プランナー)への無料相談サービスを提供しています。
老後の備えに不安のある方は、ぜひ一度相談してみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

大渕ともみ
ファイナンシャルプランナー/フリーライター

福岡で活動するフリーライター。9年間の会社員生活を経て、仕事と育児の両立のため前職を2020年7月に退職し、同年8月にライターとして独立開業。

結婚をきっかけにマネー情報に興味をもち「教育費や老後資金を賢く準備したい」と独学で2級FP技能士の資格を取得。「お金はきちんと貯めてきちんと使う」がモットー。自身でも資産運用に取り組みながら、金融関連メディアを中心に執筆活動中。

好きな食べ物はお寿司のえんがわ。趣味はウィンドウショッピングと洋裁。活発な娘に翻弄される毎日。

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