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学資保険に税金がかかる?節税効果を高めるための基本情報

教育資金を準備する方法のひとつとして利用されることの多い学資保険。思わぬ税金によって資金計画が崩れてしまわないように、学資保険に加入する前に税金のかかり方について理解しておきましょう。本記事では、学資保険への税金のかかり方について解説しますので加入時の参考にしてください。合わせて、保険加入によって節税効果を高める基本情報についても説明します。

学資保険を受け取る場合には税金はかかるのか?

学資保険とは?3つの特徴を解説

学資保険を含め、加入している保険から支払われるお金には、保険金や給付金、祝い金などいくつかの種類があります。これらのお金には課税の対象となるものとならないものがあります。

どんな時に税金がかかる? 

まず、すべての生命保険契約に共通していえることとして、「心身の傷害に基因して支払いを受けるもの」に関しては課税の対象となりません。例えば、病気やケガで入院した場合の入院給付金や所定の手術をした場合の手術給付金などが該当し、これらを受け取った場合には税金はかかりません。

対して「心身の傷害」に基因せずに支払いを受けるお金は課税対象です。例えば、死亡保険金や満期保険金、祝い金、解約返戻金などがあります。

とはいえ「課税対象となる=税金がかかる」という訳でもありません。詳しくは後の部分で見ていきましょう。

どんな税金がかかるか?

生命保険に対する課税は保険会社から受け取るお金の種類や保険料支払者(契約者)と受取人の関係などにより、「所得税・住民税」「相続税」「贈与税」のどれになるかが決まります。

学資保険の受取りは?

学資保険で受け取れるお金には、大きく分けて「満期保険金」と「祝い金」があります。これらは「心身の傷害」に基因しないお金ですから課税対象となります。

契約者と受取人によって違う税金の種類と税金がかかる場合

学資保険とは?3つの特徴を解説

学資保険で受け取る満期保険金や祝い金は課税対象ですが、どの税金の対象となるかは契約者(保険料負担者)と受取人の関係によって異なります。

契約者と受取人が違う場合の税金

契約者と受取人が別人の場合、「贈与税」の対象です。例えば、「契約者=父親」「被保険者=子ども」「受取人=子ども」というような場合です。父親が保険料として払い込んだお金を子どもにあげる(贈与する)イメージで考えると贈与税の対象となることもわかりやすいでしょう。

贈与税(暦年贈与)には年間110万円の基礎控除があります。次の計算式のように、満期保険金や祝い金として受け取った金額から110万円を差し引き、残りがプラスとなった場合、その残りの金額に応じた税率を乗じて税額を算出します。

(満期保険金等の受取額−110万円)×税率-税率ごとの控除額=贈与税額

言い換えると、受け取った金額が110万円以下であれば税金はかからないことになります。

ただ、満期保険金や祝い金を受け取った年(1月1日~12月31日までの1年間)に他の贈与も受けている場合には、それらの贈与の額も合計して贈与税を計算しなければなりません。そのため、仮に学資保険の受取り額が110万円以下の場合でも、同じ年に他の贈与を受けていればすべて合算して贈与額を計算します。

ところで、暦年贈与は誰から誰への贈与であるかによって、「一般贈与」と「特例贈与」に分けられます。贈与税の計算においても、それぞれの税率および控除額を使い分けましょう。

特例贈与財産 直系尊属(親や祖父母など)から18歳以上の者(子や孫など)への贈与
一般贈与財産 特例贈与以外の贈与。

夫婦間、兄弟間の贈与、親から未成年(18歳未満)の子への贈与など

【特例贈与財産用の税率表】

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% 0円
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

出典:国税庁タックスアンサー「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」をもとに筆者作表

【一般贈与財産用の税率表】

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% 0円
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

出典:国税庁タックスアンサー「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」をもとに筆者作表

イメージしやすいように、仮の例で贈与税の計算をしてみます。

・例1:「契約者=父親」「受取人=子ども(受取時年齢15歳)」の場合

子どもが15歳のときに祝い金30万円を受け取ったとしましょう。同年中に他の贈与がないものとすると、受取額が110万円以下ですので贈与税はかかりません。この場合、申告をする必要もありません。

・例2:「契約者=父親」「受取人=子ども(受取時年齢18歳)」の場合

子どもが18歳のときに満期保険金250万円を受け取ったとしましょう。250万円から110万円を差し引いた140万円が贈与税の課税対象となります。この例は親から18歳以上の子への贈与ですので特例贈与の対象になり、特例贈与財産用の税率表を用います。計算式で表すと次のようになります。

(250万円-110万円)×10%-0円=14万円

この例では受取人である子どもに14万円の贈与税がかかります。

契約者と受取人が同じ場合の税金

契約者と受取人が同じ人である場合には、「所得税」と「住民税」の対象です。例えば、「契約者=父親」「被保険者=子ども」「受取人=父親」というような場合です。

自分が保険料として払い込んだお金を自分で受け取ることに対する税金として、自分で稼いだお金(給与や預金利子など)に税金がかかるイメージで考えると、所得税や住民税の対象となるのがわかりやすいでしょう。

ただ、ひとくちに所得税といっても所得の種類にはさまざまなものがあり、所得の種類によって計算方法が異なります。基本的に学資保険で受け取るお金は「一時所得」または「雑所得」ですが、どちらかによって最終的な税金のかかり方が変わってきます。

・満期保険金として一括で受け取るケース

満期保険金として一括で受け取る場合は「一時所得」に該当します。一時所得は、受取り額から払い込んだ保険料の総額を差し引き、さらに一時所得の特別控除額50万円を差し引いた金額です。計算式で表すと以下のとおりです。

満期保険金-既払込み保険料総額-50万円=一時所得の金額

ちなみに、満期保険金を受け取った年(1月1日~12月31日までの1年間)に他にも一時所得となるものがある場合には、それらの金額も合わせて一時所得の計算をします。例えば、懸賞や福引きの賞金品、競馬・競輪の払戻金などが一時所得に該当します。

一時所得の額を計算できれば、その2分の1の金額を会社員の方は給与所得、個人事業主の方は事業所得などと合算し、その後の所得合計額によって所得税および住民税を計算するようになります。ただし、会社員の場合はこのとおりではない場合もあります。詳しくは後の部分で説明します。

仮の例で見てみましょう。

「契約者=父親」「被保険者=子ども」「受取人=父親」という契約で、満期保険金250万円を受け取ったとします。既払込み保険料総額は220万円だったとします。満期保険金を受け取った年に他の一時所得がないものとして、一時所得の計算式に当てはめて計算すると結果はマイナスになります。

250万円-220万円-50万円=▲20万円

例のように一時所得がマイナスとなった場合には何もする必要はありません。満期保険金を受け取ったことによって所得税や住民税が上がることはありません。

なお、他に一時所得となるものがある場合には、内部通算といって、他のプラスの額をマイナス分と相殺できます。他の一時所得の額を抑えることができます。

・保険金を年金型で受け取るケース

満期保険金や祝い金を、毎年、年金形式で受け取る場合は「雑所得」になります。税法上、雑所得は「公的年金等」「業務に係るもの(副業等)」「その他の雑所得」の3つに分けられますが、年金形式で受け取る保険金は「その他の雑所得」に該当します。「その他の雑所得」は、次の計算式に当てはめ算出します。

その年に受け取った祝い金-必要経費(※)=その他の雑所得の金額

(※)必要経費=その年に受け取った祝い金×(払込保険料総額÷総受給見込額)

雑所得の額を算出できれば、会社員の方は給与所得、個人事業主の方は事業所得などと合算し、その後の所得合計額によって所得税および住民税を計算するようになります。

仮の例で見てみましょう。

「契約者=父親」「被保険者=子ども」「受取人=父親」という契約で、18歳から祝い金を毎年50万円ずつ、合計5回受け取るとします。既払込み保険料総額は220万円とします。先の計算式に当てはめて計算すると次のようになります。

50万円-{50万円×(220万円÷250万円)}=6万円

この例の場合では、祝い金を受け取る各年の雑所得の額は6万円と計算できます。

先に説明したように、雑所得は原則として他の所得(給与所得、事業所得など)と合算し、所得税や住民税を計算します。しかしながら、会社員と個人事業主では税額が異なります。

年収が2,000万円以下の会社員は年末調整で一旦課税関係が終了していますので、通常、確定申告をする必要はありません。しかし、一時所得や雑所得など、メインとなる給与所得以外の所得が20万円を超える場合には確定申告をする必要があります。例の場合では雑所得が6万円ですから確定申告は不要となり、年金形式で受け取った保険金に所得税はかかりません。ただし、住民税は申告義務がありますので注意しましょう。

一方、個人事業主はそもそも確定申告が必要です。雑所得がある場合、確定申告の際に事業所得等とともに申告しなければなりません。例の場合では年間所得が6万円分増え、増えた年間所得に対して所得税と住民税が計算されます。

学資保険で節税はできる?

ここまで見てきたように、学資保険は契約者と受取人の関係によって保険金にかかる税金の種類が異なります。一方で、学資保険に加入することで節税に役立たせることも可能です。

学資保険は生命保険の一種ですから、学資保険で支払った保険料は生命保険料控除の対象となります。下表で示しているとおり、1年間に払い込んだ保険料額に応じて一定額を年間所得から差し引くことができます。課税所得額が減ることで、所得税や住民税が軽減されます。

【生命保険料控除額計算表】(2012年1月1日以後に締結した契約分)

所得税 住民税
年間払込保険料額 控除額 年間払込保険料額 控除額
2万円以下 払込保険料全額 1万2,000円以下 払込保険料全額
2万円超

4万円以下

払込保険料×1/2+1万円 1万2,000円超

3万2,000円以下

払込保険料×1/2+6,000円
4万円超

8万円以下

払込保険料×1/4+2万円 3万2,000円超

5万6,000円以下

払込保険料×1/4+1万4,000円
8万円超 一律4万円 5万6,000円超 一律2万8,000万円

例えば月々の保険料が8,000円だとすると、1年間で9万6,000円支払うことになります。所得税の計算では4万円を所得から控除できます。また、住民税の計算では2万8,000円を所得から控除できます。仮に所得税率が10%だとすると4,000円(4万円×10%)、住民税率は一律10%ですので2,800円、合わせて6,800円分の節税につながります。

学資保険の生命保険料控除を申請する際の注意点

生命保険料控除は目的とする保障の種類によって「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」の3種類に区分されています。

学資保険はこのうち「一般生命保険料控除」の対象ですが、他にも終身保険や定期保険、収入保障保険なども同じ区分に含まれます。同じ区分の保険の保険料は合算して、控除額を算出します。加入している保険ごとに計算するわけではないことに注意しましょう。

言い換えると、その年の所得から控除できる金額は同じ一般生命保険料控除の対象となる死亡保険などと合わせて最高4万円(住民税は2万8,000円)です。

例えば、すでに終身保険に加入し4万円の控除を受けている人があらたに学資保険に加入しても、所得控除額は増えません。

学資保険で生命保険料控除を受ける方法

生命保険料控除を受ける方法は、会社員の場合と個人事業主の場合で異なります。

会社員の場合

会社員は年末調整によって行います。会社から交付される「給与所得者の保険料控除等申告書」に生命保険会社から届く生命保険料控除証明書の内容を転記したうえ、証明書を添付し勤務先に提出します。生命保険料控除証明書は10月頃に加入している生命保険会社から届きます。

なお、会社によっては年末調整手続きを電子化しているところもあります。その場合には生命保険料控除証明書の電子データを発行してもらいましょう。電子データの発行可否や詳しい発行依頼方法は加入している生命保険会社に確認してください。

個人事業主の場合

個人事業主は確定申告によって行います。確定申告書に生命保険料控除証明書の内容を転記したうえ、証明書を添付し提出します。証明書の電子データを印刷して添付することもできます。

なお、「国税電子申告・納税システム(e-Tax)」で確定申告する場合には、証明書の添付を省略できます。電子データの発行可否やe-Taxへの対応可否は加入している生命保険会社に確認してください。

まとめ

学資保険で受け取る満期保険金や祝い金は課税対象です。契約者と受取人が別人であれば贈与税、契約者と受取人が同一の場合は所得税の対象です。なお、所得税の対象となる場合、一括受取りは「一時所得」、年金方式受取りは「雑所得」扱いです。このように、契約者と受取人の関係や、お金の受取り方などによって最終的な税負担額も変わりますから、ご自身で最も望ましい方法で加入するようにしてください。

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この記事を書いた人

續 恵美子(つづき・えみこ)

ファイナンシャルプランナー(ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®)

生命保険会社にて15年勤務したあと、ファイナンシャルプランナーとしての独立を目指して退職。その後、縁があり南フランスに移住。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。

渡仏後は2年間の自己投資期間を取り、地元の大学で経営学修士号を取得。地元企業で約7年半の会社員生活を送ったあと、フリーランスとして念願のファイナンシャルプランナーに。生きるうえで大切な夢とお金について伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。

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